石炭の歴史的や文学的背景のご紹介

1. 石炭と日本のドラマ

NHKの連続テレビ小説「あさが来た」で、主人公が炭鉱の現場に向き合う姿が描かれました。 「日本の繁栄を支えるのは、命をかけて石炭を掘る皆さんです」 という言葉のとおり、石炭は明治から昭和にかけて日本の発展を支えてきた重要な資源です。

当時の鉱夫たちの働きは、まさに日本の底力そのもの。 ドラマを通じて、多くの人が改めて石炭の価値を感じたのではないでしょうか。

2. 石炭はどのように生まれたか

石炭は、太古の植物が地中に埋もれ、
微生物による分解
地熱と圧力
長い時間の変質
などを経てできた可燃性の岩石です。
炭化の度合いにより以下の種類に分類されます
無煙炭
黒炭
褐炭
泥炭(ピート)
日本各地でも、かつては「燃石(もえいし)」「たきいし」「からすいし」「うに」「うこんいし」などの名前で親しまれてきました。

3. 文学に登場する石炭

石炭は江戸時代の文学にも登場します。

● 松尾芭蕉「野ざらし紀行」

「香に匂へ うにほる岡の梅の花」 貞享五年、芭蕉が伊賀の旧友土芳の草庵を訪ねた時に詠んだ句です。
「うに」は泥炭のことで伊賀上野地方の方言です。
句意は(悪臭漂う)泥炭を掘る岡に咲く梅の花よ、打ち消すように良い香りに匂ってくれ。

● 貝原益軒『筑前国続風土記』

燃石について、 「薪のない里で多く使われ、民にとってたいへん便利な自然の恵みである」 と記されています。

人々の暮らしの中で石炭がどれほど重宝されていたかが分かります。

4. 黒ダイヤと呼ばれる理由

石炭を手に取ると分かりますが、 表面は黒く、光沢があり、固く締まっています。
まさに“黒ダイヤ”。
「炭坑節」に歌われるように、かつて石炭は生活を支える貴重な燃料でした。

5. 黒船と石炭

「泰平の眠りを覚ます上喜撰(じょうきせん)たった四杯で…」で知られる黒船来航。 この黒船の動力は、石炭を燃やす蒸気機関でした。

当時の黒船は木造船で、外板にタールを塗っていたため黒く見えたのだそうです。 黒船が鉄の船だと思っていた方も多いのではないでしょうか。 大人になって初めて知ることは、意外とたくさんあります。

6. 現代の石炭と注意点

石炭やコークスは火力の強い燃料ですが、現在は輸入品も増えています。
一部には、
木炭に泥炭を混ぜた粗悪品
炭窯を傷める可能性のある製品
が見られます。
「安かろう悪かろう」は燃料の世界でも同じ。
用途に合った良質の石炭を選ぶことが大切です。

7. おわりに

石炭は、 日本の産業を支え 生活を豊かにし 文学にも登場し 今なお特定の用途で欠かせない燃料 として長い歴史を歩んできました。

私たちが現在使う“火”にも、こうした歴史が脈々とつながっています。 石炭を手にする時、ほんの少しその背景に思いを巡らせていただけたら嬉しく思います。

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